コトラー『マーケティング5.0』まとめ第7回 新しい顧客体験(12回シリーズ)

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トランスコスモス(以下当社)の“5ALoyalty診断”サービスの誕生の契機にもなった『マーケティング4.0』の発売から5年。シリーズ最新著『マーケティング5.0』が2022年4月20日に日本語版が発売されました。神様コトラーの緊急提言と題されたマーケティング5.0では、デジタル社会における世代間や社会の課題とマーケティング・テクノロジー活用の新戦術について語られます。記事では章ごとに概要をまとめて分かりやすくお伝えします。
第7回は「新しい顧客体験」です。

デジタル世界での顧客体験を見直す

本章で最初に例としてとりあげられているのが、日本で2015年にオープンした「変なホテル」です。利用したことがある方もいるかもしれませんが、世界初のロボットホテルとして、2022年現在で全国に20ホテル展開しており海外にも進出しています。フロントではロボットが出迎え、ロボットの台車が荷物を部屋に運び、清掃ロボットが部屋を掃除する、新しい戦略でした。人件費を抑えられるという効果がある一方で、ロボットは眠っているゲストを起こしてしまうなどのさまざまな問題を生み出してしまうことも露呈しました。このことは、すべてのタッチポイントをマシンに置き換えるという戦略は最善とはいえないという事例です。コトラーは「ロボットはクールだが、人間は温かい」として両方を組み合わせることがより良い顧客体験(CX)になるとしています。みなさんも買い物をする際に、無意識にオンライン・オフラインを組み合わせて行動しているのではないでしょうか。まずはインターネットで価格や口コミを調べてから、実際にお店に行って試着をする。その逆も同様で、ほとんどの顧客がオンラインとオフラインのチャネルを使い分けて調査や行動をしているのです。

CXは前回の記事でも紹介しているように、コモディティ化が進む現代では競争に勝つための重要な鍵となっています。素晴らしいCXは顧客のロイヤルティを高め、価格に影響されない価値を生み出す効果的な方法です。

円安時代におけるCXの重要性 福島常浩が解説するCX時代のロイヤルティマーケティング 第10回

タッチポイントに注目し続ける

CXという概念は、購入時や顧客サービスだけの狭い範囲を意味するものではありません。顧客が製品を購入するずっと前から始まり、購入後もずっと続く体験です。『マーケティング4.0』で提唱された新しいカスタマージャーニーである5Aのタッチポイントで、この道筋をたどることができます。

『マーケティング5.0』より当社にて編集

5Aは顧客ロイヤルティの測定基準を「推奨」に変えたカスタマージャーニーです。インターネットやSNSが急速に発展した現代では、コンテンツや情報がこれまで以上に溢れており、顧客は選択したり決定したりすることの難しさを経験しています。結果として友人や家族、インフルエンサーなどの信頼できる人の助言に頼っているのです。やがて顧客は特定のブランドに対するロイヤルティが育ち、自身も他社に推奨を表すようになります。企業は、顧客に推奨してもらうために5Aのあらゆるタッチポイントを入念に設計する必要があります。

新しいCXのためにネクスト・テクノロジーを活用する

5Aカスタマージャーニーにおけるタッチポイントでマーケティング活動を強化するために、私たちは実践的な知識を持つ必要があります。マーケターがよく使うマーケティング・テクノロジーはマーテックと呼ばれ、一般的な使用例は7つあります。

新しい顧客体験におけるマーケティング・テクノロジーの使用例(『マーケティング5.0』より引用)

広告
私たちが普段目にするSNSや動画サイトでも目にする機会が増えてきたのではないでしょうか。顧客に煩わしいと思われないように、視聴履歴等に基づいてターゲティングされています。

コンテンツ・マーケティング
広告ほど押しつけがましくないとされ、娯楽と教育と刺激をミックスさせたコンテンツが公開されます。動的コンテンツの分析ツールを導入する企業も多く、注目されている手法です。

ダイレクト・マーケティング
名前の通り、よりターゲットを絞った戦術です。メールマガジンなどで個々人に製品やサービスの情報を送ります。

セールスCRM
顧客リレーションシップ管理の技術は、導入している企業や検討している企業も多いのではないでしょうか。見込み顧客の管理の一部を自動化できることは、販売部門のコストの大幅な削減につながります。

流通チャネル
世界規模でのコロナ感染症流行後、流通チャネルを強化するためにもテクノロジーは使われています。ソーシャル・ディスタンスが呼びかけられる中では、接客ロボットは歓迎されました。

製品・サービス
マーテックは顧客とのかかわりだけでなく、製品・サービスそのものの強化にも役立っています。企業がカスタム化・パーソナル化のオプションを用意していることはその一例です。

サービスCRM
CRMはセールスだけではなく、ヘルプデスクなど顧客からの質問にも対応します。チャットボットの機能は、ウェブサイトやSNSなど様々な場面で活用されています。

認知から推奨までのすべてのタッチポイントで感動的なCXを生み出すためには、先進技術を活用することが不可欠です。また技術を導入するだけでなく、削減されたコストで効率化を行い、人間はマシンには出来ない仕事、すなわち顧客との心からのつながりを築くことに注力することも重要です。


※本記事は『コトラーのマーケティング5.0』より弊社にて編集・引用して解説しています

『マーケティング5.0』日本語版まとめ第1回 マーケティング5.0へようこそ
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第2回 世代間ギャップ
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第3回 富の二極化
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第4回 デジタル・ディバイド
『マーケティング5.0』まとめ第5回 デジタル化への準備度が高い組織
『マーケティング5.0』まとめ第6回 ネクスト・テクノロジー

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