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ワールドマーケティングサミット2021 福島常浩講演 ロイヤルティマーケティングと市場創造が切り拓く未来

インタビュー

「マーケティングでより良い世界を」の理念のもと、“現代マーケティングの父”と評されるフィリップ・コトラー氏が発起人となり、世界各国で開催されてきたワールド マーケティング サミット。日本でも2014年より毎年開催されており、2021年も11月6日~8日にオンラインで開催されました。フィリップ・コトラー氏をはじめ、マーケティング・経営の世界的権威、有識者など100名以上のスピーカーとともに、トランスコスモス(以下当社)福島常浩が登壇しました。ポストコロナとなる新しい時代のビジネスについてのアイデアを共有し、マーケティングの視点から社会的課題への解決策を解説した「ロイヤルティマーケティングと市場創造が切り拓く未来」と題した講演内容について、記事にまとめました。

※ライブ&見逃し配信は終了しています

マーケティングを取り巻く環境

WMS_g01今回の講演は当社が2020年に開設した新しい事務所からお伝えしています。この事務所の開設プロジェクトは2020年の1月に始まりましたが、その直後に世界規模でのCOVID-19の流行が広がりました。在宅勤務が始まり、アフターコロナの働き方というのはどんなものになるのか?という問いに対し、オープンなオフィスという答えをもって設けられた、フリーアドレスの事務所となりました。このように新型コロナウィルス COVID-19の広がりとデジタルトランスフォーメーション(DX)を背景として、新しいオフィスの在り方も大きく変わってきました。同じように、これからのマーケティングについても大きく変わっていくと予想されます。

最初に現在のマーケティングを取り巻く状況を考えてみたいと思います。マーケティングの一番の基本となるのは人口動態ではないでしょうか。人類は産業革命、世界大戦を通じて一気に人口を加速させてきました。しかし21世紀に入り、この人口トレンドは停滞・国によっては減少傾向に転じています。一部の先進国においては既に人口減少が始まっており、日本に関しても2008年にピークを迎えた後、緩やかにそして加速度的に減少傾向を強めていくということが予想されています。これに対して、米国だけは移民政策の影響で人口増加が22世紀以降も続くと言われています。

このように人口が停滞、減少する中で我々はどのようなことに注目して環境を認識すればよいでしょうか。フィリップ・コトラー教授は2021年2月に発刊された『Marketing5.0』の中で「デジタルマーケティング」と「デジタル社会のマーケティング」を区別しなければならないと述べています。人類はこれまで、さまざまな革命を経験してきました。古くは新石器革命、さらには産業革命、そして今我々が直面しているのがIT革命です。新石器革命では、人類は農耕という技術を学ぶことにより飢餓と決別し、一か所の土地に定住するというライフスタイルに変化しました。産業革命では、どのような影響をもたらしたでしょうか。産業革命の技術的なイノベーションは蒸気機関でした。この蒸気機関は、今までの人間には考えられなかった強い力を出すものであり、生産力が飛躍的に向上し生活の質の上がり、社会や生活を大きく変化させました。

それでは、今我々が向き合っているIT革命はどのような変化をもたらしているでしょう。まずIT革命がもたらす技術的影響は、皆さんもよくご存じとは思いますが、高速演算、大規模データの扱い、超高速通信、インターネットが挙げられます。

  • 高速演算:人間には到底真似のできないスピードで計算できる技術が生み出されました。最新のスーパーコンピューターでは、天文学的な数値の計算をこなすことができます。
  • 大規模データの扱い:ストレージのコストはムーアの法則を超えて、毎年そのコストを下げてきています。
  • 超高速通信:34巻の大百科事典を、1秒間に10万回伝送するほどの超高速通信の実験が成功しています。
  • インターネット:当然のことではありますが、無意識にネットワークに入っていくことが我々はできるようになりました。

しかし、上記はすべて技術的な側面であるため、マーケティングで検討する際にはこのことだけではなく、これらの変化がライフスタイルにどのように影響を及ぼしたかという点を考えることが重要です。一点目は、「だれでもいつでも世界中に費用を気にせず情報受発信ができる」ということです。地球の裏側にいる見ず知らずの人のブログをいつでも自由に、無料で読むことができます。逆もしかりで、私がセミナーやオンライン会議で発信したことは間を置かずに誰しもが聞くことができます。二点目にはID-POSや各種履歴データなど膨大なデータの取り扱いが可能になりました。たとえば日本中のコンビニエンスストアのレシートデータを一つのデータベースにおさめてしまうことは、当たり前のこととして行われているのです。三点目として、通貨によらない決済・貯蓄が現在の社会に定着しつつあることは皆さんもご存じの通りです。そして最後に、AIの登場です。AIの登場そのものが革命といってもいいかもしれませんが、この登場によって、これまで人間にしかできないと思われていた知的で創造的な作業までも、自動化することが可能となったのです。

ここでIT革命によって、世の中の情報の流れがどのように変わったのかということをお話したいと思います。これまで企業からのブランドや製品に関する情報は、マスメディアを通じて同じ情報が多くの方々に共有されていました。言い換えると、企業から生活者に対して一方通行で画一的な情報が流されていたということです。そして生活者がそれらの情報を受け取り、行動・態度をどう変えるかということが、情報に接触したときの重要なキーポイントでした。しかしこれからのデジタル社会においては、企業からの発信というのは情報流(商品が生産者から消費者へ提供される際の情報の流れ)の引き金を引く作業に他なりません。企業が発信した情報を受け取った生活者は、互いに情報の受発信を繰り返します。情報の複雑な乱反射を起こすといっても差し支えないでしょう。

デジタル社会の中では、もはやお客様を神様として異次元の取り扱いをしていくという考え方は成立しないでしょう。むしろこの社会においては、企業そのものが生活者と同じ次元・空間の中で情報の受発信を積極的に繰り返し、生活者は仲間だという意識で情報の流れに関わっていくことが大切です。

二つの環境変化とそこから生まれる二つのマーケティングの変化

二つの環境変化とは、前述した人口の停滞、減少傾向へ転じていくということと、もう一つはデジタルトランスフォーメーションの急伸のことで、これはAIに引き継がれていくものだと認識しています。今回の講演でお話したい重要なポイントは、これら二つの環境変化から生まれる、マーケティングの二つの新潮流です。一つはロイヤルティマーケティング(=CX)の重要性が一気に拡大していきます。そしてもう一つが、市場創造の必要性です。この人口トレンドとDXの進展によるマーケティングへの影響は、COVID-19の感染拡大によって一気に加速したと言えるでしょう。

ロイヤルティマーケティングの重要性について:下記の図は基本カスタマージャーニーの変遷についてまとめたものです。これまでのカスタマージャーニーは、左から右へと減じていくファネルの構造をしていました。加えてジャーニーの終点には、必ず購買・行動というアクションがありました。最新のカスタマージャーニーであるコトラーが提唱した「5A(ファイブエー)」の特徴として、ジャーニーの目的地が「購買・行動」ではなく「推奨する」というアクションに代わったことがあげられます。この点ではAISASとも非常に類似性がありますが、この5Aが決定的にユニークな点は、左から右側へと順に減っていくファネル(漏斗)の構造をしていないということです。コトラーは著書の中で「現代の生活者は、このジャーニーを戻ったり飛び越えたりする」と表現しています。

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そしてこのような社会において、顧客管理がどのように変わって行くか。お客様との接点の持ち方、作り方がどのように変わっていくかということを説明します。人口成長期においては、毎年毎年市場が上積みされ、生活者の頭数も増えていきました。この成長期の時代では新規需要をいかに早く獲得するかということがキーポイントになっていました。言い方を変えれば「狩猟型」というふうに言ってもいいかもしれません。言葉の話になりますが、これまでのマーケティングでは「戦争」に関する表現をなぞらえたものが多かったと思います。”戦略”、”戦術”など、自分の陣地をいかに拡大するか、敵をいかにつぶしていくかということがマーケティングのKFS(Key Success Factor=重要成功要因)に直結していきました。これからDXが進み、人口増加が停滞してくるという中では、このスタイルは大きく変わっていきます。

お客様との関わりのあり方は、これからは「農耕型」へとシフトします。一旦ご縁をいただいた、繋がったお客様をいかに育成し、推奨者まで育て上げていくかということが最も重要な概念に変わっていくのです。そして一人の推奨者は新しい推奨者を導き、この推奨者の連鎖が先ほどの情報流の中、生活者の中で広がっていくイメージとなります。すなわち、人口拡大期のマーケティングを狩猟型と表現しましたが、これからはむしろ農耕型のマーケティングが必要となります。

「市場規模=人口×一人当たりのお客様が受け取る価値の総量」ということであれば、人口が上昇しない限りにおいては、ひとりひとりのお客様にどれだけ沢山の価値を受け取ってもらうかということがマーケティングの成長課題になってくるということです。さらにそのお客様との接点の在り方は、購買を引き起こして終わりということではありません。お客様と製品の出会い、それ以前の出会いや情報のやり取り、SNSやコールセンター、チャット、実際の営業パーソン。これらがすべてお客様の接点として考慮する必要があります。我々はこのCXを統合的に管理する中で、お客様ひとりひとりのロイヤルティをいかに上げるか、いかにして推奨者になっていただくか。これが今後のマーケティングの主要な課題になると考えています。

市場創造の必要性について:そしてもう一つの課題として、市場創造の必要性というものが大きくなっていきます。市場創造のメリットとは、市場そのものを拡大する唯一の方法であり、成功率も高いということです。サステナビリティが求められる今日において、もっともすぐれたソリューションが市場創造といえます。2019年、デービッド・アーカー教授はマーケティングサミットの中で、次のようなことを仰いました。
「企業が成長を続けるためのたった一つの方法は、サブカテゴリ(市場創造)を起こすことによってゲームチェンジをすることだ。」
アーカー教授は書物の中でもこの市場創造の重要性について、いろいろな角度から長年主張をされています。日本においては、梅澤伸嘉教授が非常にユニークな研究をされており、「MIP市場(市場創造型商品)の成功率は、後発商品に比べて100倍になる」ということを研究結果として導き出しました。国内における223市場の先発商品・後発商品をトラッキングした結果が図のようになります。見かけの成功率では、先発・後発の優位性というものが断言しづらいかもしれませんが、実は、一つの市場に先発商品は一つしかありません。しかし当該研究における後発商品の数は約109存在していました。つまり発売した商品数をベースに割り返すと、先発商品はシェア一位を基準とした成功率:54%、後発商品は0.5%ということで100倍の差が生まれるということがわかったのです。

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DX時代に求められるマーケティング課題:まとめ

DX時代に求められるマーケティング課題として、次の2点が重要になります。

一つは顧客戦略です。現代で求められる顧客戦略はCX視点の強化におけるロイヤルティマーケティングに他なりません。これからは購買行動にとどまらず、そのお客様に本当のロイヤルティを育て上げていくということが企業にとって最も重要なマーケティング課題となっていきます。そしてそれはCX活動を通じて行われていますが、活動の範囲はこれまでのマーケティングよりももっと広い視野が必要になります。このCX活動は統合的に管理される必要があり、これまでマーケティングに比較すると非常に多くの変数を扱わなくてはいけません。このことが実務家のマーケターにとって取り組むべき仕事といえます。

そしてもう一つの観点は、市場戦略。市場創造型の商品に今後は特化していく必要があります。既存市場において差別化商品によって競争をしていくことは必ずしも有効とは考えられない時代になりました。20世紀の地球全体が一気に拡大してくるという時代から、停滞・現象へと向かう中で、IT革命という大きな局面に直面している我々には、今新しいマーケティングが必要になってきます。マーケティングの歴史の中で、過去最大の変換点を迎えているといえるのではないでしょうか。

福島常浩が御社のマーケティングをディレクションいたします

トランスコスモスでは、フィリップ・コトラーの提唱する5Aコンセプトに沿ってマーケティング戦略提案をいたします。実際のご提案に際しては、当記事の解説者である福島常浩がデジタル時代に最適化したロイヤルティマーケティングをサポート。まずは御社のお悩みをお聞かせください。

トランスコスモス株式会社 上席常務執行役員
公益社団法人日本マーケティング協会 理事
福島常浩
東京工業大学大学院修了後、味の素株式会社に入社。その後、GE Capital、三菱商事、ぐるなび、メディカルデータビジョンを経て、ビッグデータ事業、マーケティング責任者等を歴任。専門分野は、新事業・新製品開発、ブランド論、医療ビジネス、ロイヤルティマーケティング。トランスコスモスではマーケティング関連の事業開発を担当し、書籍 『コトラーのマーケティング4.0』 で紹介された5A診断を日本で独占的に提供している。

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