『マーケティング5.0』まとめ第3回 富の二極化(12回シリーズ)

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トランスコスモス(以下当社)の“5ALoyalty診断”サービスの誕生の契機にもなった『マーケティング4.0』の発売から5年。シリーズ最新著『マーケティング5.0』が2022年4月20日に日本語版が発売されました。神様コトラーの緊急提言と題されたマーケティング5.0では、デジタル社会における世代間や社会の課題とマーケティング・テクノロジー活用の新戦術について語られます。記事では章ごとに概要をまとめて分かりやすくお伝えします。
第三回は「富の二極化」です。

富の二極化

世界不平等研究所が発表した「世界不平等レポート2022」によると、世界トップ10%の裕福な家庭が所有する富は全体の75.6%を占めており、ボトム50%の貧しい家庭が所有する富は全体の2%に過ぎません。世界が抱えるもっとも難しい問題のひとつは、この貧富の格差の拡大です。今日、マーケティング5.0が機能するためのテクノロジー利用は、富める者である最上層に集中しすぎており、この状況は変わる必要があります。この社会の二極化という課題の中身と、それに対して企業ができることについて解説します。

あらゆる面で起こる二極化した社会

『マーケティング5.0』ではマーケターが直面している主な課題の一つとして、雇用から思想、ライフスタイル、市場に至るあらゆる面で極端な二極化が起こっていると指摘しています。まず雇用の二極化では、高価値・高賃金の雇用と低価値・低賃金の雇用はどちらも増加している一方で、中間層が減少しつつあります。さらに新型コロナ流行が長期化するなか、低賃金労働者ほど雇用環境が悪化し、株高の恩恵を受ける富裕層に富が集中する現象が世界的に広がっているのです。次に思想の面では、アメリカに代表される二大政党制のように、政治的二極化が加速しており、政党の所属によって暮らしや関心事が左右されています。そしてライフスタイルにおいて指摘されるのは、消費にかける二極化です。一つは所得、もうひとつは節約するモノとお金をかけるモノとをはっきりと使い分ける価値観の差異ともいえるでしょう。この消費行動もコロナ禍の影響が大きいとされ、『マーケティング5.0』では日本の片付けコンサルタント、近藤麻理恵さんの名前がミニマリスト的手法の代表として紹介されています。最後に、ライフスタイルの二極化に付随して両極に分かれ始めているのが、市場における二極化です。雇用と同じように中間のセグメントは消滅しつつあり、節約志向の商品か、より高級でぜいたくな商品のどちらかに人々が移行しているとされています。
このようなあらゆる二極化は、ここ十数年の間に進んだ所得格差に加えて、2019年以降に世界中でまん延したコロナ禍によってさらに加速したといえるでしょう。

持続可能な開発目標と自社戦略

富の格差拡大に歯止めをかけ、社会をよりよくするうえで企業の役割は極めて重要です。本章であげられた課題以外にも、人類は紛争、気候変動、感染症など数多くの問題に直面しています。世界中の協調行動を推進するために提唱された、2030年までに達成すべき具体的な目標が「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」です。諸国の政府と市民社会と企業を参加させるグローバルな連携プラットフォームとみなすことができるでしょう。

SDGsの10番目のゴールとして「人や国の不平等をなくそう」とされていますが、企業は不平等な富の分配に部分的に責任があります。市場は企業に成長追求へのより包摂的でサステナブルなアプローチによって、貧富の差の問題を解決する主体になることを期待しているのです。このビジョンに対する企業の役割は明白で、企業はSDGsを自社のマーケティング活動やほかのビジネス活動に盛り込むことによって、これらの目標を顧客の生活にスムーズに溶け込ませる手助けができます。

SDGsの17の目標を見ると、人々は少し圧倒され、とくにより高尚な目標に対しては距離を置いてしまう傾向にあるようです。この一般社会に馴染みにくいゴールに対して、顧客の生活にとって当たり前になるように企業が主導していく必要があります。たとえば金融サービス会社は、十分対応されていない市場をターゲットにし、金融テクノロジー(フィンテック)モデルを使って、金融的包摂を促進することができるかもしれません。同時に、再生可能エネルギーの開発に融資し、環境を劣化させるプロジェクトへの投資を回避することでサステナブルな投資を支持、促進できるはずです。製造企業は、生産資材の削減、再利用、リサイクルを重視する循環型経済モデルの採用によってサステナビリティに貢献するでしょう。また、マイノリティの人々を採用したり、自社のサプライチェーンに中小企業を参加させたりすることによって、経済的包摂に貢献できます。

この例のように、SDGsの目標とは本質的に包摂性(全員が社会に参画する機会を持つこと=誰一人取り残さない)とサステナブルな開発促進を目指す活動を指しているのです。SDGsと整合するマーケティングは、よりよい富の分配を通じて社会の二極化の問題を解決に向かわせるでしょう。つまり企業は中間層が復活する経済モデルの役割を担うことで、社会をもとの形に戻す努力が必要なのです。目標のカテゴリーのうち、どれが自社の事業に関連してマーケティングに取り入れられるか、検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事は『コトラーのマーケティング5.0』より弊社にて編集・引用して解説しています

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