円安時代におけるCXの重要性 福島常浩が解説するCX時代のロイヤルティマーケティング 第10回

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コロナ禍以前の生活を取り戻すため、世界的にWITHコロナに向かう動きが加速しています。そんな中、アメリカが行うインフレ抑制のための金利引き上げ政策、日本の金利緩和政策の影響から、為替市場では歴史的な円売りドル買いの流れとなり、円安が劇的に進んでいます。またこの円安は、輸入に頼る燃料費や材料費の高騰の原因となり、多くの商品で物価高を引きおこし、家計に大きなダメージを与えています。
企業にとっては、マーケティング戦略の一つである価格訴求を行うのが難しい状況と言えます。このような時代で、企業は如何にして商品やサービスを効率よく販売していけばよいのでしょうか。

消費者が商品を購入する基準は、商品の価値と価格の関係にあると言われます。価値と価格が見合っていないと感じる商品を消費者が購入することはありません。当然、物価が高くなれば商品やサービスの価格は高くなりますから、購入回数は減っていきます。そこでこれまで通り購入意欲を起こしてもらうためには、商品の価値を高めるマーケティングが必要となってくるのです。
消費者が判断基準とする商品やサービスの価値とは一体どういったものでしょうか。これはおおまかに3つに分類することができます。

機能的価値、感覚的価値は商品やサービスの機能・見た目に対する価値であり、コモディティ化が進む現代で消費者はこれらの違いに価値を見出しにくくなっています。3つの中で最も曖昧な基準でありながら、ときに重要となるのが「情緒的価値」です。情緒的価値の中で決め手となるのがロイヤルティです。商品やサービスを使用することで顧客が体感できる精神的な価値であり、価格競争が難しくなった今、企業が追求すべきとても重要な価値となっています。顧客が抱くロイヤルティはブランドや製品によってさまざまで、たとえばApple製品などはよく例にとりあげられます。最近ではSDGsなど環境問題への意識の高まりから、製品自体の差別性以上に社会貢献活動に力を入れている企業が支持されることさえあります。商品・サービスに愛着を抱き、そこに価値を見出した顧客は、価格が高額となっても購買意欲を損なうことは少なくなり、さらにその傾向は長期間継続するのです。

コトラーは自身のマーケティング理論の中で、ロイヤルティを高めることは、商品が高価格であっても、長期的にその商品・サービスを訴求できることに繋がると述べています。機能的価値や感覚的価値は差異を出すのが難しいコモディティ市場では、最終的には値下げ競争に向かっていくしかありません。その結果どの企業も利益が出せなくなり、市場の墓場と言われるようになってしまいます。ですから、価格に影響しない商品・サービスをロイヤルティによって作り出し、情緒的価値を高めることが必要なのです。

現在のように円高で原料費が高騰している時こそ、統合的なCXを推し進め、真のロイヤルティ・マーケティング戦略がもっとも重要となるのです。

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