カスタマー・エクスペリエンスとは 福島常浩が解説するCX時代のロイヤルティマーケティング第3回

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CX(カスタマーエクスペリエンス)とはなんでしょうか。これからのマーケティング、つまりロイヤルティマーケティングの時代に顧客から選ばれるためには、CXを重視して顧客と長期的な関係性を構築することを目指す必要があります。インターネット技術の向上やスマートフォンの普及によって顧客自身がSNSやブログ、口コミサービスなどを通じて能動的に情報を収集したり発信したりするようになったことで、企業や商品と顧客との接点は爆発的に広がりました。

情報量が爆発的に増え多種多様な顧客接点が発生

顧客が持つ情報が拡大したことは、マーケティングにも大きな影響を与えています。情報量が非常に少なかった頃、顧客は商品そのものから情報を獲得することがほとんどでした。もちろんテレビや雑誌などの広告は存在していましたが、たとえば1980年代の認知経路でいえば、商品や売り場での認知が1番高いことが珍しくありませんでした。
しかし今では店舗で見る前に気になるブランドや商品についてSNSで知り、調べる。もしくは店舗で見たものについて口コミサイトで調べる、などインターネット上の検索行動がほぼ必ずといっていいほど発生します。
ブランドと顧客の間に多種多様な接点が生まれたことで、両者の関わりはますます複雑になってきているのです。

ロイヤルティがマーケティングではさらに重要に

この変化について、コトラーは『マーケティング3.0』以降の3部作の中で記していますが、顧客は商品との出会いから得られるCS(顧客満足度)だけではなく、あらゆる接点を通じたCX(顧客体験)からブランドに対する認知や認識を形成していくようになっているのです。
様々な接点があり、そのすべての接点で顧客とブランドが関わり合いを持ち、そのすべての出来事が商品、ブランド、企業などの「パーセプション」、つまりイメージに反映されていくということです。それが商品の評価にもつながっていきます。たとえば商品の購買行動というシンプルな一面をきりとっても、その背景には商品そのものの良し悪しといった単純な動機だけでなく、それ以外の多くの要素が反映されているという事実が、今後のマーケティングを考えるうえで重要になっていきます。

顧客は多くの接点からなるCXを通じて、本当に自分が好きなものを厳密にかぎ分けるようになっています。これがロイヤルティとなっていきます。ロイヤルティは日本語にすると忠誠心です。言葉にするとやや厳しい印象を持つかもしれませんが、その商品に対して長期的に強く、ポジティブな関係を結んでいこうとすることです。わかりやすくいえば、特定の商品やブランド、企業に対して好きだと感じる状態、信頼できると思う状態と言い換えることができます。

ロイヤルティとは、単純にその商品自体に対する満足度が高いか低いかといった評価軸とはまったく別の性質を持つものです。ロイヤルティを持つようになると、その商品自体が良いか悪いかということとは別の軸でそのブランドや企業を支持し続けるようになるため、たとえその商品が高くなっても安くなっても同じように買い続けるようになります。そして一度ロイヤルティが形成されると、たとえ1度や2度その商品やサービス自体が満足できないケースがあったとしても、育まれたロイヤルティはそう簡単に揺るがなくなります。

CSとCXの違いとは

たとえば、お気に入りの定食屋さんがあるとします。高級店ではありませんが、魚の焼き方が好みの定食屋を想像してみてください。ある日とても混雑していて魚の焼き方が甘かった日があったとします。その日の食事そのものとして考えれば、不満となります。これを例にCSとCXの違いを考えてみましょう。CS、つまり商品の満足度の観点からいえば、そのお店は顧客に満足を与えることができなかったため、もう2度とその顧客は来ないと考えられます。しかしそのお店をすでに好きだと思っている、愛着を持っている、つまり素晴らしいCXによってすでにロイヤルティが形成されている顧客の場合であればどうでしょう。その顧客はそのあとも通うでしょう。もしかすると次回訪問の際に、店員さんに前回はおいしくなかったことを伝えるかもしれません。これはクレームではなく、友人とかわすコミュニケーションに近いものといえます。これがロイヤルティです。

CSは商品の消費に対して毎回発生しますが、ロイヤルティというのはそう簡単には形成されません。価値あるCXを実現できてはじめて築かれるものです。構築に時間がかかるかわりに一度形成されるとそう簡単には崩れることはありません。ただし先の定食屋さんの場合も、たとえば5回続けておいしくない料理を出してしまえば当然その顧客は来なくなってしまうでしょう。これをロイヤルティの消滅といいます。

これからのマーケティングでは、CSばかりではなくCXをより重視していくことが必要です。商品そのものに対する満足度は短期的な売上をつくることに役立ちますが、これからはそのような視点だけでマーケティングをおこなっていても競合優位を実現できません。
ロイヤルティがあれば値引きを要求することはないため、長期的な売上、そして利益につながります。企業活動の中では短期の売り上げが必要な場合もあると思いますが、これからのロイヤルティマーケティングにおいては、より長期的な視野を持ち、CXを重視することが不可欠です。顧客との関係性をよりよく、強固なものにしてロイヤルティを向上させることを目指しましょう。


福島常浩が御社のマーケティングをディレクションいたします

トランスコスモスでは、フィリップ・コトラーの提唱する5Aコンセプトに沿ってマーケティング戦略提案をいたします。実際のご提案に際しては、当記事の解説者である福島常浩がデジタル時代に最適化したロイヤルティマーケティングをサポート。まずは御社のお悩みをお聞かせください。

トランスコスモス株式会社 上席常務執行役員
公益社団法人日本マーケティング協会 理事
福島常浩
東京工業大学大学院修了後、味の素株式会社に入社。その後、GE Capital、三菱商事、ぐるなび、メディカルデータビジョンを経て、ビッグデータ事業、マーケティング責任者等を歴任。専門分野は、新事業・新製品開発、ブランド論、医療ビジネス、ロイヤルティマーケティング。トランスコスモスではマーケティング関連の事業開発を担当し、書籍 『コトラーのマーケティング4.0』 で紹介された5A診断を日本で独占的に提供している。

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