持続可能性がもたらす株主価値を考える 自社のビジョンを株主にマーケティングしよう

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環境破壊などのさまざまな社会的課題を背景に、顧客の関心事は企業の社会貢献活動やその根源となる企業精神へと移っています。彼らに選ばれるために、企業は持続可能性を包含したビジョンを掲げ、それを戦略に組み込み推進する必要があるのです。実はこれらの取り組みは、株主を惹きつけるためにも重要な活動になっています。

今回は、なぜビジョンの意義を株主に伝える必要があるのか、また、持続可能な活動がどのように株主価値の創出につながるのかについて、考えていきたいと思います。

企業価値は長期的な将来のキャッシュフローから生まれる

企業価値は主として長期的な将来のキャッシュフローから生まれるもので、ビジョンが企業の未来を決定します。したがって企業は長期的な業績の達成や価値の創出を追求すべきです。そして株主はそれらを評価し、辛抱強い投資を行うべきだといえます。投資活動は本来未来志向であるべきもので、その点で、持続可能なビジネス活動とも本質的に通じる部分があるのです。

持続可能なビジネス活動と収益性・投資収益性との関連性

株主のパフォーマンスは、収益性と投資収益性からなります。前者は短期的、後者は長期的な目標です。株主価値は長期的な価値の創出に根ざしたものであるのですが、実際には短期的な利益の追求に終始してしまうケースもあり、この場合、将来価値を生み出すための企業の投資が削減され、株主価値の毀損や、最悪の場合、企業崩壊につながりかねません。こうした事態を回避するために、企業は自社の持続可能なビジネス活動と収益性や投資収益性との関連を見つけ出し、株主に伝えていくことが必要なのです。

持続可能な活動を実践する企業はより大きな株主価値を生む

A•T•カーニーの調査によれば、金融危機の際、持続可能な活動をしている企業は、そうでない企業より高い業績を上げていました。環境の変化に柔軟に適応し、より大きな株主価値を生み出すために、持続可能性は不可欠な戦略なのです。最近ではこうした経験から投資家も持続可能性への関心を高めており、自社の活動について株主にきちんと伝えることは、企業にとって優先度が高いテーマになっているといえます。

持続可能性を包含したビジョンを株主にマーケティングする

では、どのように自社のビジョンや実績を株主に伝えるとよいのでしょうか。株主は顧客とは異なり、魅力的なストーリーにさほど感動するわけではありません。彼らにとって最も重要なのは、投資に対するリターンが得られるかどうかです。したがって持続可能性の実践が競争優位を築き、長期的な株主価値の創出につながるのだということを、財務的な根拠とともに示していくことが不可欠です。

ここでは重要な3つの測定項目を紹介しますので、企業は自社の長期的利益を下記の観点から測定し、株主に提示していくとよいでしょう。

・コスト生産性の向上 株主の収益性への貢献

社会や環境に配慮した活動は消費する資源や廃棄物の量を減らし、訴訟リスクを低減させると同時に、顧客からも支持されます。彼らはコミュニティを通じてクチコミを広めたり、製品開発に協力したり、積極的にビジネスプロセスを担ってくれるため、あらゆるコストの削減につながっていきます。

・新しい市場機会の獲得による売上の増大 株主の収益性と投資収益性への貢献

このような企業は、生活水準の向上を目指す途上国にとっても魅力的です。本来なら規制の厳しい成長市場から歓迎され、自由を与えられやすくなります。新市場への参入は競争相手が少ないため、売り上げと利益の増大が見込めます。成熟市場と貧困市場の両方にアクセスできるという利点は、さらに強力な競争優位性の実現にもつながっていきます。

・ブランド価値の向上 株主の長期的な投資収益性への貢献

優れたビジョンは企業ブランドの構築に役立ちます。ブランドは顧客にとってはお墨付きのようなもので、高価値のブランドの製品は信頼され、選ばれるようになるため、さらなる価値の向上につながっていきます。信用やブランド価値は目に見えないため、財務的に評価し、わかりやすく株主に説明することが課題となります。

自社の価値が適切に評価されるために、企業は持続可能性を包含したビジョンを株主にしっかり伝える必要があります。その際、持続可能な活動が生産性の向上や、新市場の獲得、ブランド価値の向上を実現すること、それらすべての便益が競争優位性や売上の増大に貢献することを説明しましょう。そして最終的には、長期的な株主価値の創出につながるのだということをアピールしていくとよいでしょう。こうした活動により、企業は短期的な株主利益の最大化だけに集中しているときと比べ、高い長期的収益性を生み出せるようになるのです。

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