コトラー『マーケティング5.0』まとめ第8回 データドリブン・マーケティング(12回シリーズ)

記事

トランスコスモス(以下当社)の“5ALoyalty診断”サービスの誕生の契機にもなった『マーケティング4.0』の発売から5年。シリーズ最新著『マーケティング5.0』が2022年4月20日に日本語版が発売されました。神様コトラーの緊急提言と題されたマーケティング5.0では、デジタル社会における世代間や社会の課題とマーケティング・テクノロジー活用の新戦術について語られます。記事では章ごとに概要をまとめて分かりやすくお伝えします。
第8回は「データドリブン・マーケティング」です。

セグメント・オブ・ワン

データドリブン・マーケティング、すなわちデータに基づくマーケティングは、個々人のレベルで顧客のプロファイリングを行い、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを大規模に実行することができます。

まずは、従来のセグメンテーションの手法をみていきましょう。
これまでも、市場全体が均一のニーズを持っていることはないため、共通のニーズや行動を持つグループに市場を細分化するセグメンテーションがマーケティングでは常に行われてきました。

市場をセグメント分けするには、一般に以下の4つの方法が用いられます。

地理的変数地域、都市規模、人口密度、気候
行動変数追及便益(品質、便益、経済性)、使用量(ヘビー、ミドル、ライト)、ロイヤルティの強さ、製品の使用シーン(自宅、職場、休暇、通勤時)
心理的変数ライフスタイル、パーソナリティ
人口統計的変数年齢、性別、世帯規模、家族ライフサイクル(独身、既婚、子供の有無や年齢)、所得、職業、学歴、社会階層、人種、世代、国籍
出所:(公社)日本マーケティング協会監修『ベーシック・マーケティング』

4つの変数によって示された顧客セグメントの架空のユーザー像が「ペルソナ」と呼ばれるものです。これら顧客のセグメンテーションとプロファイリングはこれまでのマーケターにとって必須のことでした。

しかし、ビッグデータの登場は従来できなかったマイクロ・セグメンテーションの実現可能性を切り開いたのです。
従来のセグメンテーションは依然として有用であるものの、ビッグデータを統合するデータエコシステムを構築することで顧客プロフィールはより強化され、臨機応変に戦略を変えることができるとされています。

※データエコシステム:企業内部のさまざまなデータを外部のデータと掛け合わせ、新たなビジネスモデル、収益モデルを創出すべく形成されるステークホルダーの集合体

データドリブン・マーケティングを構築する

データドリブン・マーケティングとは、企業内外のさまざまな情報源からビッグデータを集めて分析するとともに、マーケティング決定を促進し、最適化するためにデータエコシステムを構築する活動のことです。マーケティング5.0の要素のひとつであり、有望な手法であるにもかかわらず、実際にデータドリブン・マーケティングのメリットを享受している企業は多くありません。

データドリブン・マーケティングの構築のためにどのようなステップが必要なのかみていきましょう。

ステップ1:データドリブン・マーケティングの目的を決定する

データドリブン・マーケティングの使用例は多くあり、範囲も広いです。たとえば新しい製品・サービスのアイデアを発見したり、市場の需要を予測したりできます。CXのパーソナライズ化やカスタム化にも役立つでしょう。
しかしデータドリブン・マーケティングに取り組む際は、一つか二つの目的に絞ることが重要です。データドリブン・マーケティングの専門的な事柄は、プロジェクトにかかわる組織にとって馴染みのあるものではないかもしれません。人間は生まれつき、自分が理解していないことに対しては警戒心を抱く生き物です。絞り込んだ目的は幅広い目的よりも伝えやすく、組織内の人々、とりわけ懐疑的な人々を結集させる手助けになります。

ステップ2:必要なデータを特定し、それらのデータが入手可能か否かを確認する

デジタル時代の今日、データの量は爆発的に増加しています。ビッグデータには万能な分類方法はありませんが、データソースによって分類して実用化することは可能です。

  • ソーシャルデータ
  • メディアデータ
  • ウェブトラフィックデータ
  • POS取引データ
  • IoTデータ
  • エンゲージメントデータ

マーケターは事前に決定した目的のために、どのデータが入手可能か確認し、社内外のデータの記録や状況を確かめる必要があります。

ステップ3:統合データエコシステムを構築する

入手したデータセットは、単一のデータ管理プラットフォームに保管することが肝要です。そうすれば、マーケターはデータを総合的に捕捉、保存、管理、分析することができます。
またシステムは自動化が見込まれますが、いったん構築して終わりではなく、新しいオファーやキャンペーンを定期的に設計する必要があることを忘れてはなりません。

まとめ

ビッグデータの登場は、これまでのマーケティング環境を大きく変化させました。これまでのセグメンテーション・ターゲティングだけでなく、セグメント・オブ・ワン・マーケティングを実現できるようになったのです。
顧客データは爆発的に拡大していますが、重要なことは、具体的な目的を定めることです。ITプロジェクトとしてインフラ投資をしたり、分析ツールを取り入れたりする前に、自社の課題に沿ったマーケティング戦略を設計し、明確なマーケティング目的を持ちましょう。


※本記事は『コトラーのマーケティング5.0』より弊社にて編集・引用して解説しています

『マーケティング5.0』日本語版まとめ第1回 マーケティング5.0へようこそ
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第2回 世代間ギャップ
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第3回 富の二極化
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第4回 デジタル・ディバイド
『マーケティング5.0』まとめ第5回 デジタル化への準備度が高い組織
『マーケティング5.0』まとめ第6回 ネクスト・テクノロジー
『マーケティング5.0』まとめ第7回 新しい顧客体験

タイトルとURLをコピーしました