【マーケティング5.0】カスタマーエクスペリエンス(CX)とは

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これからのマーケティングにおいて重要なテーマのひとつは、顧客個人を理解し、アプローチをパーソナライズすることです。顧客は自ら情報収集したり情報発信するようになったことで、さまざまなニーズや価値観を持つようになりました。企業を選択する際の判断基準も多様化しており、かつてのように顧客をかたまりとしてとらえ、画一的なアプローチを行っているだけでは顧客の心を掴むことが困難になっています。こうした時代のマーケティングではカスタマーエクスペリエンス(CX)という概念が重要になります。CXの質を高めれば、顧客ロイヤリティが向上し、推奨行動を生み出すことができます。CXは近年注目を集める概念であるものの、あいまいな理解のまま使っている人も少なくありません。今回はCXの考え方について理解を深めていきます。

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは

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カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)とは、日本語でいうと「顧客体験」となり、「CX」と略されることが多いです。顧客体験の質を高めることを「CX向上」といいますが、この取り組みは顧客にとって期待以上のコミュニケーションやサービスなどを提供し、ロイヤリティや支持を高めようとする戦略のことです。

CXは、商品そのものの価値やサービスを高品質にしようという発想ではありません。購入前の段階から実際の購入、さらに購入後に至るまで、顧客ライフサイクル全体における顧客と企業とのすべての交流や関係を重視し、そこから生まれる体験の質を向上させようという思想です。

CXはオンライン・オフラインを問わず、たとえばSNS上で顧客が無意識的に行うような接触も含みます。企業と顧客の間には実にさまざまな接触機会が存在します。そのすべてがCXです。ひとつひとつの体験の質を高めることで顧客のロイヤリティを高めつつ、最終的に企業やブランドを周囲に広める推奨者になってもらうことを目指します。

CXはなぜ重要か

CXは重要な差別化要素である

コモディティ化、情報化した現代は世の中にモノやサービスが溢れています。基本的欲求が満たされた顧客は社会的欲求や承認欲求などの高次の欲求を満たしたいと思うようになっています。SNSが広く普及した一因は、これらの欲求を上手に満たすことに成功したからだといえるでしょう。このように世界では物質的ではない価値や体験が大きな差別化要素となるため、多くの企業がCXを重視するようになっているのです。

CX向上は顧客の推奨行動を生み出す

顧客はかつてのように受動的な存在ではありません。積極的に情報収集を行い、商品やサービスについて調査します。この過程で顧客が最も信頼する情報がクチコミです。クチコミは一見地道かもしれませんが、非常に高い宣伝効果があります。クチコミを動機に購入した顧客が満足すれば、さらに他の顧客へ推奨します。じわじわと影響力が強まっていくため、既存顧客の売上増大と新規顧客獲得の両軸で収益強化が実現できるようになります。

CXを向上させるためのポイント

企業のミッションに基づき、あらゆるチャネルを通じて一貫した価値や体験を提供する

チャネルによって提供する価値やサービスレベルに差が生じるのは望ましくありません。顧客がそのとき最も便利な方法で違和感なくシームレスな体験が実現できることが理想です。これはOMOの考え方でもあります。企業のミッションに基づき、SNS、ウェブサイト、EC、店舗、コールセンターなどあらゆるチャネルを通じて一貫した価値や体験の提供を目指しましょう。

あらゆるチャネルの顧客データを一括管理し、データの意味を理解する

優れたCXの提供には顧客に対する理解が不可欠です。チャネルや部署、システムなどの都合によりデータが分散管理されている企業もありますが、分断されたデータはそのままでは意味を持ちません。データ同士を関連づけ、データの意味を理解しましょう。データは社内で一括管理できるように、必要があれば社内組織の構造の見直しも検討します。

CXをパーソナライズする

顧客について理解を深めたのちは、パーソナライズしたアプローチを行います。必要に応じてカスタマージャーニーマップなどを活用しながらタイミングやチャネル、内容などを個別に最適化していきます。顧客は自分にとって有益な情報を絶妙なタイミングで提供されることを求めているため、すべての顧客に画一のアプローチを続けていると顧客はやがて離反します。

優れたCXは永続的な企業価値や持続的なファン層の形成に寄与するものです。自社と顧客が接点を持つすべての瞬間で高品質な体験を提供するのは容易ではないですが、はじめから完璧を目指す必要はありません。顧客は企業に完璧さよりも人間性を求めているからです。自社にしか提供できない本質的な価値を追求し、顧客に対して誠実な対応を続け、信頼関係を構築していくことが重要になります。

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