マーケティング3.0/4.0で提起される人間中心のマーケティングとは?

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人間中心のマーティングは、『マーケティング3.0』で唱えられたコンセプトであり、『マーケティング4.0』では関係ないものと思ってしまう方もいるかもしれませんが、そうではありません。デジタル化が進むにつれて、ますますマーケティングは、人間中心に考える必要が出てきています。マーケティング4.0は、マーケティング3.0の拡張版というべきものになっているのです。

人間中心のマーケティングはブランドの魅力を高める鍵

製品中心のマーケティング1.0、顧客中心のマーケティング2.0から、人間中心のマーケティング3.0に変わった背景には、ソーシャルメディアの発達、社会的課題の顕在化、市場の成熟化があります。消費者は企業や製品に関するポジティブな情報からネガティブな情報まで、さまざまな情報にアクセスできるようになり、さらには企業姿勢やビジョンを問うようになりました。そのため、同じような商品が並んでいた場合には、消費者は社会的に支持できる企業を選ぶようになってきています。企業は倫理的で社会的責任を果たすマーケティングをビジネスモデルに組み込み必要が出てきたのです。

マーケティング4.0において、人間中心のマーケティングはデジタル時代においてブランドの魅力を高める鍵となります。なぜなら人間的性格を持つブランドが最も差別化されていることになるからです。顧客のインサイトから顧客の人間的側面を明らかにし、ブランドも人間的側面を見せることで、人間対人間のつながりを築き顧客を惹きつける段階にきているのです。

近代マーケティングの変遷 マーケティング1.0、2.0、3.0のそれぞれの特徴

このページでは、①顧客の人間的側面を明らかにする手法の紹介と、②顧客を引きつけるブランドの人間的側面にはどのような要素があるかを解説していきます。

顧客の人間的側面を明らかにする手法

顧客インサイトを明らかにする手法として有名なのは、ソーシャルリスニング、ネトノグラフィー、共感的リサーチなどです。これらは人間学の中でも新しい専門分野であるデジタル人間学であり、デジタルインターフェースにどのように顧客がアクションをしているかを探求するものです。最近では、マーケターが市場の知見を見つけるのに使うようになり人気が高まっています。

ソーシャルリスニング

ソーシャルリスニングとは、インターネット上、とりわけソーシャルメディアやオンラインコミュ二ティで、ブランドがどのように語られるかを積極的にモニタリングする作業です。顧客が本当に思っていることを調査するには、自然発生するソーシャルメディア上での会話に耳を傾ける必要があります。

ネトノグラフィー

ネトノグラフィーとはネットに焦点を当てた民俗学です。民俗学(エスノグラフィー)の手法を使って、オンラインコミュニティにおける人間行動を理解しようとするのがネトノグラフィーです。ソーシャルリスニングとは異なり、リサーチャーがコミュニティのメンバーになり会話に加わり共感を深める必要があります。

共感的リサーチ

人間中心デザイン(HCD:使用する人の観点でモノを作るための仕組みを体系化したもの)の先触れとなった共感的リサーチは、顧客の潜在的ニーズを明らかにするための手法です。具体的には、リサーチャーがコミュニティメンバーに直接会って観察したり、対話やブレーンストーミングなどを通じ知見を統合します。ここで得られた知見は、顧客を驚かせたり感動させたりする新製品開発や、新しい顧客経験・ブランドキャンペーンにつながっていきます。

顧客を引きつけるブランドの人間的側面とは

スティーブン・サンプソンの著書『Leaders without Titles(肩書のないリーダー)』で、横の関係のリーダーの特性を、コトラーはブランドの人間的側面に据えようとしています。その特性とは、他者を支配しようとせず、他者を惹きつける人間的特性を備えるブランド。威圧的にならず、寄り添うような横の関係、すなわち友達や仲間として顧客の態度変容に影響を与えるために必要なブランドの人間的側面は、身体的魅力、知性、社交性、感情性、パーソナビリティ(人間力)、道徳性の6つの要素があるのです。

ブランドにおける身体的魅力とは、すぐれたデザインのロゴや巧みに作成されたタグラインなどのブランド・アイデンティティから生まれます。

ブランドにおける知性とは、革新的で他のプレイヤーや顧客がそれまで思いつかなかった製品サービスを世に送り出し、顧客の問題を効果的に解決できる能力です。

ブランドにおける社交性とは、顧客との会話を恐れず、顧客から直接の言葉はもちろん、顧客間の会話にも耳を傾けたり、顧客との繰り返しのコミュニケーションでエンゲージメントを強化するとともに、SNSでも顧客を引きつける投稿するなど、顧客と積極的にコミュニケーションを行うことです。

ブランドにおける感情性とは、顧客の感情をかき立て、好ましい顧客行動を促進する力です。感情に訴えるメッセージで、顧客と感情レベルでつながるのです。

パーソナビリティ(人間力)とは、自己認識であり、ブランドがなんのために存在しているのかを正確に知っており、欠点も知っている自己認知です。自信と自発性を持って自らのブランドを高めようとするのです。

道徳性とは、倫理的で強い誠実さをブランドが備えるということです。強い道徳性を持ったブランドは、倫理的配慮がビジネス決定の重要な要素にもなります。

現在のマーケティングでは、上記のような人間的側面がブランドにも求められており、顧客に寄り添い友達のような関係を築くことでブランドアフィニティに影響を与えるのです。顧客の人間的側面とブランドの人間的側面が互いに向き合う段階、人間中心のマーケティングのさらなる進化が求められています。


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