マーケティング4.0時代のカスタマージャーニーの類型

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カスタマージャーニーとは、顧客がブランドを認知していない状態から、認知、関心、調査、購入、さらには推奨へ至る道筋を、どのように進んでいくかを示すものです。カスタマージャーニーは、ブランドを取り巻く地理的条件や市場の特性、価格帯、購入頻度などさまざまなものに影響を受け、複雑で多様になり、消費者ごと、企業ごと、サービスごとに異なるカスタマージャーニーとなります。

『マーケティング4.0』で提唱された5Aの類型

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マーケティング4.0では、カスタマージャーニーを新たに5A(A1=認知 A2=訴求 A3=調査 A4=行動 A5=推奨)フレームワークにまとめ、さまざまな産業を①ドアノブ型、②金魚型、③トランペット型、④漏斗型の4つのパターンに分類しました。

そこから、さまざまな産業の長所を取り入れた理想形の5Aモデルは蝶ネクタイ型であることが述べられています。

蝶ネクタイ型と自社が属するパターンとの差異を理解することで、どのように課題に対処すべきか、どのような成功要因があるのかがわかり、改善のチャンスを見つけることにつながります。

ブランドの完璧な姿を示す蝶ネクタイ型の特徴とは?

理想的な蝶ネクタイ型の5Aモデルが実現されている状態とはどのような状態なのでしょうか?

  1. ブランドを認知しているすべての人が、自ら進んで当該ブランドを推奨する(認知=推奨)
  2. ブランドの訴求力がきわめて強いため、ブランドに惹きつけられるすべての人がそれを購入する(訴求=行動)
  3. 顧客は自ら調査する必要性を感じず、調査のボリュームが最も小さくなる

このようにして、蝶ネクタイ型の5Aモデルが成立しています。

カスタマージャーニーの類型 4つのカスタマージャーニー

①ドアノブ型カスタマージャーニー

4つのパターンのうち最も多くみられるパターンで、代表的なのは、消費者向けパッケージ製品産業です。

製品の価格が低く、購入が頻繁であるため、顧客はブランドについて詳しく知る必要性を感じません。そのためあまり調査をせずに、手に入りやすい、価格が相対的に低い、魅力的なプロモーションなどに影響されて、一瞬かつ衝動的に購買します。こうした特徴から顧客はブランドに愛着を感じにくく、ブランドを推奨することはあまりありません。当社が独自に行った調査でも、日本市場はドアノブ型が多く、また国民性の特徴として推奨を行うことが少ないという結果が得られました。

訴求力のあるマーケティングコミュニケーションの頻発などによりブランドのスイッチングが頻繁であるため、ブランドは顧客のロイヤリティを向上させるためのエンゲージメントプログラムを強化して、親近感のレベルを高めるとよいといえます。

②金魚型カスタマージャーニー

主として企業間(B2B)取引でみられるパターンです。

多くの場合、顧客は個人ではなく、豊富な専門知識や利害関係の存在するチームとなります。彼らの調査・評価プロセスは徹底しており、訴求はほとんど効果を持たないのが特徴です。似通った競合が複数存在するため、ブランド間の評価結果は類似する傾向にあり、ブランドとの親密さが決定要因となることが多くあります。

競合との差別化やその伝達の改善によりコミットメントと親近感のレベル、さらには好奇心のレベルも最適化するべきですが、一般に百戦錬磨の顧客を相手にしているので、もっとも厳しい課題に直面することになります。

③トランペット型カスタマージャーニー

主として高級車、高級腕時計などのライフスタイル・カテゴリーで見られるパターンです。

既にクオリティの点で強力かつ独特な信用を築いているため、価格が高いにもかかわらず顧客の評価プロセスは簡単なものになります。金銭的に購入できない人も含めて、製品の持つ希少性が魅力となり多くのファンを持ちます。顧客はたとえ自分がそのブランドを購入、使用していなくても積極的に推奨する傾向にあるため、行動よりも推奨のボリュームが大きくなるのが最大の特徴です。 潜在的買い手にとっては希少性が訴求力となるため、それを弱めることがないように注意しながら、利用しやすさを改善することで、コミットメントのレベルを高めるとよいといえます。

④漏斗型カスタマージャーニー

主として耐久消費財産業やサービス産業で見られるパターンで、顧客がカスタマージャーニーの全段階を通り抜けるため、総合的な顧客体験の設計が重要です。

購入は計画的に行われ、顧客はブランドの主張よりも実際の体験を重視します。自分が気に入らないと推奨しないため、ブランドのポジショニングは表面的なものではなく実際の経験に深く根差している必要があります。 ブランドのスイッチは頻繁ではないものの、顧客はより良い顧客体験を期待するため、このカテゴリーでは破壊的イノベーションが最も起こりやすく、ブランドにとっては斬新的改良と顧客経験のイノベーションが重要な課題となります。販売とアフターサービスのバランスをとることで、親近感とコミットメントのレベルを高めるとよいといえます。

企業は自社の状況に合わせて、よりよい顧客との関係性を築くために、蝶ネクタイ型のカスタマージャーニーに近づける施策立案の実行が求められるでしょう。

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