企業と顧客のつながりが縦から横に変化した時代にどう対応するか

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IT技術やテクノロジーの発展とともに、企業と顧客の情報格差が解消されつつあります。従来は企業が顧客に対して情報を与えて説き落とすようなマーケティングが行われていました。若干誇張した内容で広告やキャンペーンを行ってでも、製品・サービスが売れることを目的としていたのです。しかしいまでは、顧客は企業の広告をなかなか信じません。そのために企業は製品・サービスを宣伝する際に、いかに広告臭を消したコミュニケーションをとるかが重要になってきています。

顧客は企業広告よりも口コミを信じる

過去70年のマーケティングコンセプトは、縦の関係を軸にしていました。すなわち、企業から一方的に顧客に働きかけるものでしたが、現在のマーケティングコンセプトは、顧客同士がつながっている横の関係に支えられるものに変化しています。特に近年は、ソーシャルメディアの広がりが大きな影響を及ぼしています。

ソーシャルメディアの広がりによって、顧客は企業が発信するメッセージよりも、他の顧客の口コミを信じるようになっています。どんな製品やサービスのマーケターでも、自身もまた他の製品を使い、感想をソーシャルメディアで共有する時代です。マーケティングは、マーケターが消費者に対して行う活動だけではなく、消費者が他の消費者に対して行う活動をもマーケティングとして機能するようになっています。誰もがマーケターであり、誰もが消費者の時代となっているのです。

ニールセンの世界消費者動向調査によると、企業が出稿する広告を信頼する顧客は減っており、新たな信頼できる広告形態として、口コミが期待されています。家族や友人の推奨を信頼し、さらにはオンラインで投稿される顧客の意見を信用する時代になりました。顧客は専門家よりも、知人やSNS上の見知らぬ人を信頼しているのです。

こういった顧客の広告に対する態度変化を受けて、広告もまた変化しないわけにいきません。影響力のあるインスタグラマーに、製品と一緒に写真を撮って投稿してもらったり、ブロガーに製品レビューを書いてもらうなど、対価を支払って投稿や記事執筆を行ってもらうスポンサードコンテンツが出現しています。

顧客の信頼を勝ち取るマーケティング活動

企業は顧客の信頼を得るために、顧客同士の横のつながりを重視した関係性を構築する必要があります。これからのマーケティング活動では、共創、コミュニティ化、キャラクター構築といった要素が重要になるでしょう。それぞれの特徴をみていきます。

共創

共創とは、イノベーションに対する新しい取り組み方を表すものです。すなわち企業と顧客、供給業者やチャネルパートナーなど、さまざまなステークホルダーが協働することによって新たな価値や製品を創造することをいいます。

共創のかたちとしては、SNSや企業のプラットフォームを利用して企業と消費者が製品、サービスについて議論を交わすことで製品をより良いものにしたり、新しいサービスを生み出したりするといったものがあります。これは顧客フィードバックを製品に反映するオープンソースソフトウェアの開発に見られるやり方を、他の産業にも応用する方法です。

顧客同士がつながる横のネットワークの中で行われる共創を、企業はうまく利用することで、自社の製品・サービスをより発展させることができるのです。

コミュニティ化

テクノロジーの進化は、顧客同士を結びつけてコミュニティ化する方向に進ませています。そして企業はこのコミュニティを、顧客との信頼関係を結ぶために活用するべきです。コミュニティは企業に役立つためにあるのではなく、その構成メンバーである顧客に役立つために存在しているため、企業はそのことを認識し、コミュニティのメンバーに役立つように振る舞う必要があります。

顧客コミュニティの形成は、考えにつながるか(プール型)、コミュニティの分類は顧客が互いにつながるか(ウェブ型)、リーダーにつながるのか(ハブ型)のいずれかになるといわれています。

プール型:コミュニティの顧客は同一の価値を共有しているが必ずしも互いに交流するとは限らない。顧客を結びつけているのは、ブランドに対する信念と強い愛情。

ウェブ型:コミュニティの顧客は互いに交流する。典型的なソーシャルメディアコミュニティで、結びつきを支えているのはメンバー間における1to1の関係性。

ハブ型:コミュニティの顧客は強力な人物のまわりに引き寄せられ、忠実なファン層を形成する。

キャラクター構築

ブランドが人間とつながるためには、真の差別化ができるユニークなDNAを企業が持つ必要があります。顧客はブランドを見たときに、そのブランドが発信するメッセージやストーリーが本物か偽物かを即座に判断する力を持っており、企業は本物と判断してもらえるよう、自身の主張に背かない経験価値を提供するよう一貫した行動が必要になります。

広告の中だけではなく、ソーシャルメディア上、実店舗での行動が顧客からはウォッチされており、一貫性のない行動は信用を失うことになります。消費者がコミュニティでつながっている現代では、信用を失うことは潜在的顧客のネットワーク全体を失うことに繋がるため、しっかりとしたキャラクターの確立が必要なのです。

以上のように、現在は顧客がインターネットに常に接続できる状態にあり、ソーシャルメディアの利用が当たり前になっている時代です。成長を続ける企業には、時代にあったマーケティングが求められます。有効な口コミづくりや、共創、コミュニティ、キャラクターの確立などを自社のマーケティング戦略に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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